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「最高だったよ・・・あやのちゃん・・・」
と、キモゴローがあやのに触れようとすると
「楽しかったわ、トシゴローさん」
と、あやのはDiorのバッグを抱えてそそくさとホテルを出た。
夜風がぬるい。
じっとりとまとわりつく自分の髪の毛から、誰のものか分からない匂いがする。
あやのは急に吐き気をもよおした。
アルコールを飲んでいた訳でもないのに電信柱の蔭でゲェゲェ吐いてしまった。
涙が出る。
あんな男に何時間も舐め尽くされていた自分の身体が気持ち悪くて仕方ない。
このままセミみたいにこの身体を剥いて、中からピカピカの新しい自分になって飛んでいってしまいたい・・・・。
涙のしょっぱさと、ゲロの苦さで訳のわからない味が口の中を占拠する。
「サイ・・・アク」
半分笑いながらあやのは自分の手に握られているピンク色の小さなバッグを見つめた。
こんなモノ・・・・。
道路沿いのフェンスに投げつけようとバッグを振りかざして、やめた。
「あは、は・・・・」
力なく笑いながら、とぼとぼと歩く。
通知の点滅が気になってスマホを開いた。
@hinako. suno
2ショット希望!(笑)のコメントに2000件もいいねがついている。
スマホを持つあやのの手が震える。
こいつ・・・ひなこ、お前覚えてろよ。
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