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化け物たちの毛むくじゃらの顔の奥で赤い目が爛々と光っていた。
化け物たちは互いに顔を見合わせ、にたり、となんとも不気味に笑うと、棺の周りを踊りながらゆっくりと回り始めた。
「このことばかりは知らせるな。
飛騨高山、化け物退治の平十郎には知らせるな」
一匹がざらつく声を上げた。すると、
「知らせるな」
残りの二匹が続いた。
三匹の化物は何度も同じ言葉を繰り返し、棺の周囲を踊り回った。
朽ちかけたお堂の床は、巨大な化け物どもが踏みしめるたび、ギシギシと悲鳴を上げた。
化け物どもはよほど嬉しかったであろう、気味の悪い声はだんだんと上ずっていった。
やがて化け物どもは動きを止め、棺の周りを取り囲んだ。
「飛騨高山、化け物退治の平十郎は、今夜ここへは来るまいな」
化け物の一匹が言った。
残る二匹はお堂の中をぐるり見回すと嬉しそうに、
「大丈夫」
顔を見合わせ言った。
化物どもは棺に目を移した。
「おなごは、どんな顔しとるかいのう」
「恐ろしゅうて震えておるかいのう」
「うぶな顔で命乞いをしたら、明け方までは生かしておこうかいのう」
「じゃが、生きてはおっても手足が無くなり、歩くことも這いつくばることもできんかもしれんがのう」
化物どもは口々に勝手なことを言い、ククッと笑った。
「どれ、とっくと見てみるか」
化物の一匹が、毛むくじゃらの太い腕を棺に伸ばした。
化物の手が棺の蓋にかかり、ゆっくりとそれをずらしていった。
蓋を開けた化物は、待ちきれぬように中を覗き込んだ。
その時、「チリン」と微かな淡い金属の音色が響いた。
心地よさと気味の悪さが入り混じった音だった。
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