巻・二

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だが、仲間が殺されようとも狼どもはまったく怯む様子もなく、次々と平十郎に襲いかかってきた。 平十郎はそのすべてを斬り捨てた。 一匹でも斬り逃せば、後ろで待ち構えている狼どもがいっせいに襲いかかってくるだろうという緊迫感があった。 狼どもは断末魔の声を発するだけで、すぐに動かなくなった。 平十郎が十匹ほど斬り捨てたところで狼どもの攻撃が止んだ。 屍の山が出来ていた。 平十郎は、ふうとため息をついた。 が、すぐに大刀を構え、次の攻撃に備えねばならなかった。 狼たちはさらに数を増し、間合いも詰まってきていた。 「駄目じゃ、斬っても斬っても、数が多すぎる」 平十郎は狼たちを目で牽制しながら言った。 「平十郎、上へ」 鈴の声に平十郎はちらりと顔を向けた。 「狼は木に登れない」 鈴はそう言って上を指差していた。 「そうか」 平十郎はうなずくと、手にした大刀を狼たちに向けたまま腰を屈め、そのまま座り込んでいる女の方ににじり寄った。 「さあ、わしの背に乗れ」 平十郎が言うと、女はスーっと平十郎の背後に進んだ。 女はろくに足も動かさず、水平に移動したように鈴の目には映った。 「お願いいたします」 女はそう言うと、平十郎の背に体をあずけた。 平十郎は右手で大刀を構えたまま、左手を女の腿の辺りに添え、立ち上がった。 その時である。 「アッ」 鈴は思わず声を上げた。
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