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すると、女はまるでそれを遮るかのように、
「あれをご覧なさいませ」
と言い、下を指差した。
平十郎も鈴もそちらに目を向けた。
三人のいる松の根元は騒然としていた。
数え切れぬほどの金色の目玉が光り、不気味な唸り声が響き渡った。
やがて、ざわついていた狼どもが急に静まった。
すると、一匹の狼が後ろ足で立ち上がり、前足で松に寄りかかった。
続いて二匹目が最初の狼の肩によじ登り、同じように前足で松の幹に寄りかかった。
三匹目、四匹目とこれに続いた。
さらに、それらの狼どもを踏み台にして、新たな狼が松の木を登ってきた。
「何じゃ?狼どもが次々に木に登ってくる。
まるで、梯子でもかけとるかのようじゃ」
歴戦の平十郎が、ひどく驚いていた。
「これが噂に聞く『狼ばしご』か・・・・・・」
鈴は、誰にも聞こえぬほどの小さな声で呟いた。
狼どもの築き上げたはしごは、平十郎たちが腰かけている松の枝の高さまで届こうか、というところまで来ていた。
狼たちの荒々しい息づかいが伝わってきた。
「かまわんわい、来たら斬り捨てるまでよ」
平十郎は太い松の枝の上で中腰になり、大刀を抜いた。
狼どもはとうとう、三人のいる枝の高さまでの狼ばしごを作り上げた。
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