巻・二

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最初の一匹は狼ばしごを登りきると、躍り上がるようにして平十郎に襲いかかってきた。 「平十郎さまを舐めるなよ」 平十郎は一太刀でそれを斬り捨てた。 斬られた狼は叫び声を上げ、松の枝から落下していった。 息つく暇もなく、次の狼が平十郎に襲いかかった。 平十郎はそれもばっさり斬り捨てた。 だが、狼の襲撃は収まらず、続々と松に登ってきた。 平十郎はそれらすべてを斬り捨てた。 ようやく攻撃が止み、最後に斬り捨てられ落下した狼が、松の根元にぶつかった。 哀れな悲鳴が平十郎と鈴の耳に届いた。 「いい加減あきらめたか」 平十郎は額の汗を拭いながら言った。 狼どもが体を張って作り上げた狼ばしごは、まだかけられたままだったが、登ってくる狼はもはやいなかった。 ふと、松の根元に狼どもが集まって何やらひそひそと話をしているのが木の上にも聞こえてきた。 驚くことに、それは人間の話し声だった。 「今夜の魚は手強いぞ」 「どうしたらええんじゃろうか」 暗闇の中で、まだ無数の金色の目が蠢いていた。 狼どもの話はなかなかまとまらず、騒然となっていった。 やがて、一匹の狼が、 「城のじいさまを呼べ」 と言った。 すると、 「そうじゃ、そうじゃ」 「城のじいさまに頼むしかあるめえ」 他のおおかみどももこれに同調した。 「城のじいさまとは?いったい何者?」 鈴は木の上から注意深く狼どもの様子をうかがっていた。 そうしているうちに、複数の狼がどこかに走り去って行った。
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