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「それでは皆さま、あたいの芸をとっくとご覧あそばせ。
冥途の土産に・・・・・・」
最後の言葉を鈴は低い声でつぶやくように言い、ニヤリと口元をほころばせた。
続いて、扇子をサッと動かした。
扇子の影に隠れていた鈴の片腕が現れた。
だが、現れた片腕は着物の袖までで、そこから先が消えていた。
「手が消えた......」
平十郎も狼たちも呆気にとられた。
次の瞬間、
「グギャー」
獣と人との入り混じったような叫び声が、松の上から響き渡った。
平十郎がそちらを向くと、白毛の狼が片目を前足で抑え、よろめいていた。
兜の下の片目には、引っ掻き傷が縦に数本走り、そこから、だらだらと血が流れ出ていた。
後ろ足で立っていることが困難になった白毛の狼はふらついて後方に倒れ、そのまま狼ばしごを転がり落ちた。
続いて、狼ばしごを形成していた狼どもも、どっとばかりに崩れ落ちた。
松の木の根元に狼どもが次々に落ちていった。
一方、地上に居た狼どもは騒然となり、我先にと逃げ出した。
鈴はフゥーと大きく息を吐いた。
「あたいの芸は、ざっとこんなもんでございます」
鈴はそう言うと、背後の平十郎の方を振り返ろうと首をひねった。
「今回のも貸しだからね。
後できっちり払っておくれよ、利子付きで」
おどけたようにそう言った鈴だったが、後ろを見た途端、そのあどけなさの残る少女の顔が凍りついた。
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