『靴に願いを』

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『靴に願いを』

「大人になったら一緒に冒険に出ような!」  そう約束した幼馴染は病弱で、とてもとても剣を握る事など叶わなかった。  彼は代わりにレザークラフトナイフを手に、数多の靴を生み出した。客の需要に合わせて革を漉き、鋲を打って、靴底のラバーを整える。 「彼に頼んでおけば何も心配は無いよ」  最早村中の信頼を一身に浴びていた。  やがて隣国との戦が始まり、徴兵の令がこの村にも届いて、体力に自信のある俺を含めた数名が征く事が決まった。 「僕が強ければ」  免れた事を彼は泣いて悔いて、俺の為に最高の一足を拵えてくれた。 「この靴が君を守る。絶対に」  本当に呪いでもかけたのかとばかり、彼は強気な瞳で、その靴を俺に差し出した。 293文字。 『毎月300字小説企画』第4回お題『靴』。 先月の、敵対側の国であった話かもしれないし、全然違うかもしれません。
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