壱 ・ 喧嘩上等

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 見るとさっき雪の上にしゃがみこんでいた金髪の男が拳を前に突き出して荒い息をついている。  私に抱きついていたはずの男は横腹を抑え、地面でのたうちまわっていたが、やがてそろりと立ち上がり、地面に唾を吐くと眉間に青筋を立てながら叫んだ。 「てめえ、そんなことしてどうなるかわかってんだろうなぁぁ!」  互いに睨み合う二人にオロオロするしかない私。男は拳を高く振り上げて金髪の男に殴りかかっていく。拳がまともに顔にあたったのか、金髪の彼の鼻から新たな血が噴き出た。  今度は金髪の彼が地べたにへたる番だった。荒い息をついて苦しそうに殴った男をにらみ上げている。 「何だその目は!」  男は金髪の彼をさらに蹴り上げ、他の二人の男も加勢して男を容赦なく蹴り始めた。
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