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男達は何やら話していた。私の剣幕が思いがけなかったようで、どうしようかと顔を見合わせているようだ。
よし、この隙に彼を背負って逃げよう。
彼の上半身を持ち上げて背負おうとしたけれど、重すぎてびくともしない。
「それ普通に考えて無理だから。あんた細すぎだし」
「歩けるなら、歩いて下さい」
「んー、いっそここで死んだら歩けるかもな」
「バカ。冗談言ってる場合?」
お調子者でマイペースな気質なのかこんな状況だというのにヘラヘラと笑っている。呆れて咎めた時、コンビニの駐車場に白いワンボックスカーがザッと音を立てて入って来るのが見えた。
ワンボックスカーは私達の前で急停止すると、中から黒いコートを着た長身で足の長いスリムな男の人が出てきておもむろに警察手帳を出して彼らに見せた。
「やべ、マジで来たぜ」
男達は一瞬怯んだが、大男はペッと唾を地面に吐きかけて、拳を握る。向かっていく男達に黒いコートの人は鮮やかな投げ技で男達を華麗にかわして投げ飛ばしていく。まるでアクション映画のヒーロ―さながらだ。その光景に私はへなへなと地面に座りこんでしまった。
するとワンボックスカーから女の人が降りて駆け寄って来た。ショートカットの凛とした顔立ちのその人は彼の肩を片方持ってと言い、二人でワゴンに金髪の彼を運んだ。ワゴンの中に避難したら小さな女の子が金髪の彼に抱きついた。六、七歳ぐらいの少女だ。
「まーくん!美羽のパパが来たからもう大丈夫だよ」
少女は汚れるのもかまわない様子で金髪の彼の顔に嬉しそうに頬を寄せている。彼は彼女のおさげの頭を優しく撫でた。
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