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やや暗い気持ちになりながら黒いダッフルコートを羽織り、黒いスノーブーツを履いて実家の玄関を出る。庭から門までの道の雪は綺麗に両脇に避けられていた。早起きの父が毎朝、雪かきしているからだ。歩きづらかったことは今まで一度もない。
親は選べない。仕方のないことだよね。
何度も言い聞かせてきたそんな慰めを自分にかけながら玄関ポーチを降りて庭を横切る。しかし門を出た途端に滑りそうになった。慌てて両手を伸ばし、石垣に掴まってバランスを取り戻し荒く息を吐いた。
冷え込みが増す大晦日だった。陽は暮れて国道まで出る細い道には午前中に降りしきった雪がもう道の真ん中からパリパリと凍りはじめていた。
コートのポケットに入れていたボーナスで買ったばかりの好きな雑貨屋さんで買ったピンクゴールドメッキの腕時計を取り出してみる。安いけれどオシャレなデザインが気に入っている。新しい年まであと七時間を切っていた。
新しい年になる。
始まりはせめて穏やかに過ごしたい。
そう願いながら時計をポケットに戻す。それからスケートブーツを履いてるように足を前後に滑らせてすいすいと国道までの道を歩いた。
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