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この田舎町の外れ、小さな平屋の立ち並ぶ昔からの住宅地に建つどの家からも、賑やかな会話が微かに聞こえていた。
帰省している家族や親戚がいるのかな。
……楽しそうで、いいなぁ。
もし。この後コンビニから帰って醤油のペットボトルをコンビニの袋から取り出した私が、さっき門の外で滑りそうになったけどスリルがあって楽しくてね、スケートみたいに滑りながら行って来たよと今の気持ちを母にニコニコしながら言ったとしたら、父はなんて言うだろうか。
楽しいだと?
バカな。怪我したらどうする。
そう言いながら父が眉間に皺を寄せる表情が容易に浮かび息が詰まる気がした。
仕方ないんだ。
明るく振る舞ってここに帰るしかないもの。
ここは私の実家だし故郷だ。
せめてここに帰省している間は父の好むような娘を、演じなければ。
父の背中を見つめてただ不安そうな母の顔を思い出してため息を吐く。
「桃子、ケンカしないで、今年は」
母の声が蘇る。
私の中から這い出た白い息はユラユラと自由に形を変えて、冷え冷えとしたこの場所から逃げるようにすぐに姿を消していった。
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