02:乗客

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「もしかして、事故でどこかに埋もれちゃったの……?」 「いや、多分それはないです。土とか瓦礫も見えないし、車内の電気はついてるし」  事故で何かの下敷きになっているとすれば、乗客は誰も降りられないだろう。  それ以前に、あれだけの人数が乗車していたのだから、圧死していてもおかしくない。だというのに、僕たちは怪我らしい怪我もしていないのだ。 「……というか」  混乱していた僕は、もっとも大きな違和感に気がつく。  目覚めた時から感じていたはずだが、頭を打った衝撃のせいだと思い込もうとしていたのかもしれない。 「電車、走ってますよね……?」  吊り革も、僕らの身体も、規則的な動きに揺られている。  僕たちを乗せた電車は、間違いなく暗闇の中を走り続けていた。 「なんで……? 事故が起こったなら、走るわけないよね? 他の人たちを降ろして、私たちだけ乗せて走るなんて……」 「普通はあり得ないです」  この状況は普通ではない。大掛かりなドッキリを仕掛けられたにしては、手が込みすぎている。  それ以前に、ドッキリなんて仕掛けられるような心当たりもない。僕はごく普通の一般人なのだから。
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