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「もしかして、事故でどこかに埋もれちゃったの……?」
「いや、多分それはないです。土とか瓦礫も見えないし、車内の電気はついてるし」
事故で何かの下敷きになっているとすれば、乗客は誰も降りられないだろう。
それ以前に、あれだけの人数が乗車していたのだから、圧死していてもおかしくない。だというのに、僕たちは怪我らしい怪我もしていないのだ。
「……というか」
混乱していた僕は、もっとも大きな違和感に気がつく。
目覚めた時から感じていたはずだが、頭を打った衝撃のせいだと思い込もうとしていたのかもしれない。
「電車、走ってますよね……?」
吊り革も、僕らの身体も、規則的な動きに揺られている。
僕たちを乗せた電車は、間違いなく暗闇の中を走り続けていた。
「なんで……? 事故が起こったなら、走るわけないよね? 他の人たちを降ろして、私たちだけ乗せて走るなんて……」
「普通はあり得ないです」
この状況は普通ではない。大掛かりなドッキリを仕掛けられたにしては、手が込みすぎている。
それ以前に、ドッキリなんて仕掛けられるような心当たりもない。僕はごく普通の一般人なのだから。
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