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「とりあえず、他の人の様子も見てみませんか? なにか覚えてる人がいるかもしれないですし」
「えっ? ああ、そうだね。そうしよう」
僕の言葉を受けて、高月さんはようやく他にも乗客が倒れていることを認識したらしい。
状況は未だに呑み込めていないけれど、人数が多い方が心強いことは確かだろう。
車両の端にいた僕たちは、一番近い座席の奥に倒れている人物に近づいていく。
うつ伏せに倒れている男性の身体を、そっと反転させてみる。その顔を見て、僕は驚いてしまった。
「え、なんで……?」
「うぅん……あれ、清瀬……?」
「喜多川、帰ったんじゃなかったのか?」
倒れていたのは、バイト同期の喜多川黄紀だった。
随分ガタイがいい男だとは思っていたが、まさか喜多川が倒れているだなんて。
「いや、帰ったんだけどバイト先に忘れ物してさぁ……あ、高月さんじゃないスか。お疲れ様でーす」
「……お疲れ様。喜多川くん、大丈夫?」
「はい?」
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