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僕の隣にいた高月さんの存在を認めると、喜多川はヘラヘラとした様子で挨拶を交わしている。
どうやら状況を把握できていないらしく、彼女の問いに対して首を傾げていた。
「なんだこれは、一体どうなってる……!?」
「やだ、あたしどうしちゃったの……? き、清瀬先輩!」
「うわ、電車どうなってんだよ? これから三次会あるってのに」
「……どういう、ことだ……?」
目を覚ました喜多川から少し遅れて、ほかの乗客もどうやら意識を取り戻したらしい。
声のする方へと顔を上げた僕たちは、恐らく全員が驚愕したことだろう。
店長の澤部墨彦、後輩の桧野琥珀、そして同期の福村透。
それ以外にも、顔と名前が一致する人物が六名ほど。
同じ車両に乗っていた全員が、顔見知り――僕のバイト先の関係者だったのだ。
「これって……偶然なの?」
「わかりません、だけど……普通じゃない」
勤めているバイト先の最寄り駅、最終電車。
同じ電車に乗り込むことはあるだろうし、そこまでなら偶然で片付いたかもしれない。
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