02:乗客

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 けれど、明らかに不自然な状況で、車内に残されているのが知り合いだけだなんて。どう考えても、なにかの意図が働いているとしか思えなかった。  後から目を覚ました人たちは、状況をまるで理解していない。  僕だって把握できている情報なんてほぼ無いに等しいが、彼らに今の状況を説明すると、全員が信じられないという顔をする。 「わたしたちだけを乗せて電車が走り続けている? そんなものあり得んだろう!? お前たち、どうにかせんか!」 「まーまー、落ち着いてくださいよ店長。とりま車掌呼びましょ、それで解決ですって」  誰が悪いわけでもないのだが、説明を受けた澤部店長は、怒りに任せて地面を蹴りつけている。  それを宥める福村が、出入り口の横に設置された真っ赤な非常停止ボタンを押した。
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