02:乗客

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「……あれ?」  しかし、押されたボタンはカチカチと無意味な音を立てるだけで、何の反応もない。  もちろん電車が止まる様子もなければ、車掌が応答する気配もなかった。 「壊れてんのか?」 「ふざけるな! 非常時に押せないボタンになんの意味がある!?」 「ふぇ……店長こわぁい……」 「大丈夫、琥珀ちゃんこっちおいで」  人の少ない車両の中に、店長の怒鳴り声はよく響く。それに委縮した桧野さんが泣きそうになっているが、高月さんが自分の傍に彼女を呼び寄せていた。 「なんか、これって……都市伝説のやつみたいだな」
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