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03:都市伝説
「え?」
喜多川がぽつりと落とした言葉に、全員が彼の方へと視線を向ける。
注目を集めた喜多川は挙動不審になっていたが、真っ暗な窓の外を一瞥すると、話しづらそうに口を開く。
「いや、俺も聞いた話なんだけど。『特別な終電に乗り込むと、死後の世界に向けて出発する電車がある』って」
「そんなバカげた話があるか! 喜多川、お前はいい大人だろうが!?」
「そうなんですけど。じゃあこの状況は何なんだってなるじゃないですか」
喜多川は、そういった話を好んで調べる人間だったということを思い出す。
興味のない人間の耳には入らない話題だが、確かに電車に乗る前にも、そんな噂話をしている女子がいた。
「じゃあ、仮に……仮にだけど、本当にその都市伝説の電車なんだとしたらさ。どうすれば降りられるんだ?」
僕らにとって重要なのは、この電車がその噂の電車なのかということではない。
この電車から、どうすれば降りられるのかということだ。
「本当かはわかんないけど。抜け出すには、終着駅に着くまでに先頭車両に行って、電車を止めなきゃいけないらしい」
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