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「止めるって、車掌に頼むってことか?」
「そうじゃないか? 俺だって興味本位で調べただけだから、どうすりゃいいかなんて……」
現実でこんな状況になるなんて、想像したことすらなかった。喜多川だってそうなのだろう。
彼のせいでこうなったわけではないのだから、知らないということを責められない。
だというのに、思考回路が違う人間というのはいるもので。
「まったく、肝心なところがわからないとは役立たずめ! 若さだけで無能が許されるなんぞ、甘っちょろい社会になったもんだ!」
「店長、落ち着いてくださいよ。無能に怒るなんて時間の無駄ですって。ほら、とりあえず座ってください」
「フン!」
普通に会話していても声が大きい店長は、禿げ上がった頭から湯気でも噴き出しそうなほどに怒っている。
そんな店長を落ち着かせようと、座席に腰を下ろさせたのは福村だった。
一見すると気遣いができる男にも見えるのだが、生憎と福村はそんな奴ではない。
店長の機嫌を取りながら、喜多川に対して無能だと思っているのも本音なのだろう。それは喜多川だけではない、僕に対してもなのだろうが。
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