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「桧野さん、どうかした?」
「その……喜多川先輩の話が本当だったら、終着駅に着くまでに先頭車両に行けなかった場合……あたしたち、どうなっちゃうんですか?」
向けられた疑問に、全員の視線が再び喜多川の方へと向けられる。
この電車から降りる方法にばかり意識を奪われていたが、その疑問はごく当たり前のものだろう。
喜多川はさっき、死後の世界に向けて出発する電車だと言っていた。
それならば、この電車の行きつく先なんてひとつに決まっているじゃないか。
「……あー……まあ、死ぬんじゃないかな」
「へ……そんな……ッ」
「琥珀ちゃん……! ちょっと喜多川くん、脅かすようなこと言わないで」
「すいません、だけど……」
怯えて泣き出しそうになっている桧野さんを、高月さんが慌てて安心させようとしている。
喜多川は悪い奴ではないのだが、たまに空気の読めないところがある。
(ましてや桧野さんにそんなこと言ったら、印象悪くなるのに……)
けれど、喜多川の話が本当なのだと仮定するならば、僕らにはタイムリミットがある。
どのみち、こんなわけのわからない電車に乗り続けていたい者はいないだろう。
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