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「とりあえず、先頭車両まで行けばいいんだよな?」
「そのはずだけど」
「なら簡単じゃないか。お前たち、さっさと行ってこい!」
優先席を広々と使ってふんぞり返っている店長が、顎をしゃくって僕たちに指示する。
面倒ごとはバイトにやらせて、自分はそこで降りられるのを待つつもりなのだろう。
この車両の中で、一番上の肩書きを持つのが澤部店長だ。ここはバイト先ではないとはいえ、わざわざその指示に逆らおうと考える者はいない。
素直に従うのは腹立たしいが、この空間に店長と閉じ込められ続けるよりはマシだろう。
「それじゃあ、僕らで行ってこようか」
「私も行くわ、他の車両がどうなってるのかも気になるし」
「あっ、じゃああたしも行きます……!」
喜多川と二人で行くつもりだった僕は、その申し出に驚いて二人を見る。
高月さんは責任感の強い人だから、じっとしているのは性に合わないのだろう。桧野さんは、単にこの場に残りたくないようにも見える。
人数が増えて困ることはないし、何かあった時に伝達もしやすい。
名乗り出てくれた二人と共に、僕らは先頭車両へ向かってみることにした。
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