01:平凡な人生

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 チャラついた人間とは、昔からソリが合わない。  人によるんだろうけど、僕の周りにいたチャラい人間はみんな、いい加減なクセに要領だけは良かった。  だから、僕みたいに要領の悪い人間がなにかと損をする。そうして、さも自分の手柄のように美味しいところだけを横取りしていくのだ。  そんなことを考えながら、僕は見慣れた駅のホームに並ぶ。  忘年会シーズンだ。ただでさえ人の密集する場で、周囲には酒臭い人間も少なくない。  酔った人間はやたらと声が大きい。そんなに大声を出さなくたって、隣にいる人間には十分届いているだろうに。  汚い唾を飛ばしながら喋り続ける男は、言うまでもなくかなり不愉快だった。  できれば一緒の車両には乗り込みたくないが、生憎とこれから移動ができるほど、ホームに隙間がない。  それでも、この電車を逃せば帰宅の手段を失ってしまう。いっそタクシーで家まで帰れたらと思うのだが、叶わぬ願いなのは百も承知だ。 (クソ、全部福村のせいだ……)  早く家に帰って寝たい。そう考えて顔を上げた先に、覚えのある後ろ姿を見つけた。 「あれ、もしかして……高月(たかつき)さん?」
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