03:都市伝説

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「……隣、見えないですね」 「なんだろ、何かガラスに塗られてんのかな?」 「いや……外と同じなんじゃないかな」  この車両で待つことにしたメンバーは、それぞれ座席に腰掛けて、僕たちの様子を見守っている。  彼らの間を抜けて車両同士を繋ぐ貫通扉の前までいくと、僕はそこで足を止めた。  通常であれば、窓ガラス越しに隣の車両の様子を窺い見ることができる。  けれど、目の前にある窓は真っ黒に塗り潰されてしまったような状態で、隣を覗くことはできない。  試しに指先でなぞってみても、感触はツルツルとした普通の窓ガラスそのものだ。  一切の光を通さない黒は、ペンキや何かが塗られているというよりも、外の景色が見えないのと同じような気がした。 「入ってみるしかないってことか……」 「お化けとか、いないですよね……?」 「大丈夫だよ、お化けなんていないって」  扉の向こうの光景を想像して恐怖したらしい桧野さんが、僕のコートの裾を握っている。  よほど怖がりなのかと思ったが、こんな状況なら仕方がない。  意を決して扉を開けようとした時だった。
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