89人が本棚に入れています
本棚に追加
/237ページ
自分にそんな癖があったなんて、指摘されるまで気がつかなかった。
誰とでも打ち解けることのできる人だと思っていたけど、こんな風に人のことをよく見ているからこそ、できることなのかもしれない。
「よく見てるんですね」
「……清瀬くんのことは、よく見てるよ」
「え……、えっ?」
「あ、電車くるみたい」
少し潜めた声音で落とされた言葉に、僕は一瞬固まってしまう。
それがどういう意味なのかを問い返そうとした時、電車が到着するというアナウンスが響いた。
(どういう意味って……深い意味なんかないよな)
高月さんは、面倒見のいい先輩だ。
僕に限らず後輩のことはよく見ているし、お客さんや店長に対する接し方も上手い。
こんなにも近い場所にいるのに、僕には手の届かない、高嶺の花だ。
「うっそ、そんな話信じてんの!?」
高月さんの背中を見つめて物思いにふけっていた僕は、自身の後ろから響いた声に意識を呼び戻される。
肩越しに振り向いてみると、どうやら二人組の若い女の子らしい。年末とはいえ、こんな時間まで遊び歩いていたのだろうか?
最初のコメントを投稿しよう!