01:平凡な人生

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 僕と同じように、声の大きさに驚いて彼女たちの方を見た人間は多い。  視線に気づいたショートカットの女の子は、周囲に軽く頭を下げる。  同じくロングヘアーの女の子も声を潜めたけれど、すぐ前に立っている僕には会話の内容が筒抜けだった。 「みんな話してるんだって、死後の世界に連れてかれる電車のこと」 「私はそんな話聞いたことないけど」 「詩織(しおり)は噂話とかあんまり興味持たないからでしょ。特別な終電に乗り込むと、そのまま死後の世界に出発しちゃうんだって」 「特別な終電ってなに?」 「わかんないけど、なんかヤバい終電なんでしょ」 「美穂(みほ)だって詳細わかってないじゃん。少なくともこの電車じゃないでしょ、こんな大人数が死んじゃったら大ニュースだよ」 「そうだけどさ~」 「私はリアルの殺人事件とかの方が怖いよ。去年とか隣町の池にさ~……」  噂話をしていた彼女たちの話題は、あっという間に別のものへと切り替わっていく。  僕にも、都市伝説みたいなものを信じていた頃もあったかもしれない。
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