89人が本棚に入れています
本棚に追加
/237ページ
僕と同じように、声の大きさに驚いて彼女たちの方を見た人間は多い。
視線に気づいたショートカットの女の子は、周囲に軽く頭を下げる。
同じくロングヘアーの女の子も声を潜めたけれど、すぐ前に立っている僕には会話の内容が筒抜けだった。
「みんな話してるんだって、死後の世界に連れてかれる電車のこと」
「私はそんな話聞いたことないけど」
「詩織は噂話とかあんまり興味持たないからでしょ。特別な終電に乗り込むと、そのまま死後の世界に出発しちゃうんだって」
「特別な終電ってなに?」
「わかんないけど、なんかヤバい終電なんでしょ」
「美穂だって詳細わかってないじゃん。少なくともこの電車じゃないでしょ、こんな大人数が死んじゃったら大ニュースだよ」
「そうだけどさ~」
「私はリアルの殺人事件とかの方が怖いよ。去年とか隣町の池にさ~……」
噂話をしていた彼女たちの話題は、あっという間に別のものへと切り替わっていく。
僕にも、都市伝説みたいなものを信じていた頃もあったかもしれない。
最初のコメントを投稿しよう!