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「ここの路線、カーブも多いから危ないし。……嫌じゃなかったらですけど」
ズルい言い方をしてしまった気がするが、実際に彼女のことを心配しているのは事実だ。
高月さんは少し迷った後に、小さく断りを入れてから僕の腕に掴まってくれた。
ほどなくして、電車が動き出す。
時折後ろの乗客の体重が掛かることもあったが、進行方向に合わせてバランスを取れば、立ち位置は安定してくれた。
電車は徐々にスピードを上げていく。このまま無言でいることはできるが、こんなチャンスはもう二度とないかもしれない。
少しでも高月さんとの距離を縮めたいと思った僕が、意を決して口を開いた時だった。
「ッうわ……!!??」
体格のいい男性に全力で体当たりをされたような、大きな衝撃。
急なことで踏ん張りもきかず、掴んでいた手すりから指が滑り、足が地面から離れる。
痛みを感じたのか、何が起こったのかもわからない。ただ、脳天から鼻に抜けるような激しい衝撃を受けた瞬間、僕の視界は暗転した。
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