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僕はすぐに駆け寄って、彼女に声を掛ける。どうやら怪我などはしていないようで、気絶しているだけらしい。
「高月さん、聞こえますか?」
「ん……あれ、清瀬くん……?」
「良かった、起きられますか? どこか痛いところとか……」
「大丈夫、だと思う……何が起こったの?」
「僕にもわかりません。多分、事故なんだと思いますけど……」
覚えているのは、意識を失う直前の感じたこともないほどの衝撃。けれど、見回した限りでは血痕などは見当たらない。
僕らが気絶している間に救助が来て、ほかの乗客たちは降りたのだろうか?
「なに、これ……」
起き上がるのを手伝っていると、高月さんが青ざめた表情で何かを見ていることに気がつく。
その視線の先を辿った僕は、窓の外を見て絶句した。
地下鉄ではないのだから、本来そこには街の景色があるはずだ。しかし、窓の外は真っ暗でなにも見えない。
立ち上がって外を覗き込んでみるが、ガラス越しに僕の顔が映り込むだけだった。
夜だからだろうかとも思ったが、それにしたって明かり一つないのはどう考えたっておかしい。
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