02:乗客

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 僕はすぐに駆け寄って、彼女に声を掛ける。どうやら怪我などはしていないようで、気絶しているだけらしい。 「高月さん、聞こえますか?」 「ん……あれ、清瀬くん……?」 「良かった、起きられますか? どこか痛いところとか……」 「大丈夫、だと思う……何が起こったの?」 「僕にもわかりません。多分、事故なんだと思いますけど……」  覚えているのは、意識を失う直前の感じたこともないほどの衝撃。けれど、見回した限りでは血痕などは見当たらない。  僕らが気絶している間に救助が来て、ほかの乗客たちは降りたのだろうか? 「なに、これ……」  起き上がるのを手伝っていると、高月さんが青ざめた表情で何かを見ていることに気がつく。  その視線の先を辿った僕は、窓の外を見て絶句した。  地下鉄ではないのだから、本来そこには街の景色があるはずだ。しかし、窓の外は真っ暗でなにも見えない。  立ち上がって外を覗き込んでみるが、ガラス越しに僕の顔が映り込むだけだった。  夜だからだろうかとも思ったが、それにしたって明かり一つないのはどう考えたっておかしい。
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