1:国主の見た目がどう見てもモブじゃなかった

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1:国主の見た目がどう見てもモブじゃなかった

 「白蝶の国」で生まれ育った私が、ネットを通して最初に知った驚きの事実。それは、モンシロチョウが極めて貴重な蝶であることだった。それゆえに、唯一白い蝶を見られる国として、「白蝶の国」という名前になったとのことである。この世界の蝶は、何処の地域でも黒あるいはそれを基調としたカラフルな色をしていて当然なのである。  そんな前世で私が生きてきた日本の北陸地方に当たる位置にある「白蝶の国」は、ゲーム本編開始直後に隣の大国「蒼鳥の帝國」国主貴織(たかおり)家率いる貴織軍によって侵略、国主伯毘(はくび)一族暗殺のコンボを喰らい、あっさりと滅ぼされてしまっていた。  しかし、今生私が生まれたこの歪な世界において、この国は天然の要害に囲まれ難攻不落の「豪雪の要塞」と呼ばれる程に鉄壁な国として、5つの国を総合した島国、ヒミカ列島に名を轟かせていた。国を率いる伯毘家およびその臣下たち全体のIQと戦闘能力が飛躍的に向上していたのである。  主な要因として、転生仲間たちから聞いた要素は2つ。  1つ目は、貴織軍に所属している仲間曰く、ゲーム内では少数のはぐれ勢力となっていた白蝶の国出身のキャラクターだけでなく、明らかに元のゲームにはいなかった姿の強そうな武将が2,3人程いて、生半可な侵略をしてもあっさりと追い返されるようになったということ。  そして2つ目は、代替わりしたばかりの白蝶の国国主、伯毘(はくび)家の当主、及び彼のご兄弟など近しい親族が大変な傑物揃いだという噂。    果たして伯毘家に入軍しこの目で確かめたところ、仲間たちから聞いた話は本当だった。  先ず、前世でも見たことのなかった、明らかにモブではない見た目のやたらと強そうな武将たち。  ゲーム内で見たよりも、更に強者のような威圧感を出した白蝶出身のキャラクターたち。  彼らに負けず劣らず目立つ見た目とオーラをした私の同期たち。  そして、武将たち以上にモブとは到底呼べない位に整った顔立ち、目立つ色をした髪や目の伯毘家当主。   (ごめん、すうちゃんたち。この人たちから逃げるのは無理。)  密かに転生者仲間と計画していた蒼鳥の帝國への亡命計画は、彼らを一目見ただけで潰える事となった。その晩計画を白紙に戻すと話したところ、「そんな気はしていた」「俺もこっそり同席していたけどあれは亡命無理ゲーだわ。」「今後ともよろしく」などといった(一部関係ない)感想を頂いた。  今後しばらくの課題は、社交性の高過ぎる伯毘軍の一部仲間たちとの関わりを極力避け、休日に引き籠れる環境を整えることである。唯一の救いは、顔のいい男が多いので同人小説のネタに困らなそうなことぐらいか。
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