3:この世界について考察してみた。

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3:この世界について考察してみた。

  あれから家に戻った後、私は今生の世界について少しでも考察するために、恐らく融合したであろう世界の元となった作品について、前世の知識を呼び起こし、纏める事にした。幸い、ネットで転生者仲間たちと知識の共有を長い事してきたので、この内一つについては余り詰まることなく思い出すことが出来た。  先ずは、前世の私が生きてきた平成から令和初期の日本。  次に、伯毘家や貴織家、「伯蝶の国」などの元ネタとなったゲーム、『ヒミカ幻想戦記』である。戦国時代を元にした、日ノ本と似て非なるヒミカ列島を舞台とした、育成シミュレーション、アクション、戦略ものの全てを楽しめる欲張りセットのゲームだ。  それぞれの武将を育て、育てた武将でアクションゲームなどを遊ぶことが出来るという変わったシステム。  キャラクター毎に手に入る特殊能力がある程度こちらの自由に決めれるので、時には一風変わった戦闘スタイルのキャラクターを育てる事が出来るのが楽しみの一つ。  ストーリーは日本の安土桃山時代をベースに、最強の武将になるように育成対象を鍛え上げながら、所属している勢力によるヒミカ統一を目指すというものだ。戦国ものであると同時にファンタジーものでもある為、魔術呪術、果てはモンスター、埒外の存在なんてものも登場する。最終的には日本で言うところの織田家に当たる「蒼鳥の帝國」勢力の武将が代替わりで当主になり(豊臣家と徳川家が元ネタだろう)、列島を統一するという結末が一応の正史に当たっていた筈。しかし、育てるキャラクターによって列島の未来は変わってくる。もしこの設定が今生の世界にも反映されているならば、誰がこの世界の主人公に当たる「育成対象武将」ポジションなのか、或いはそもそもの立場の人物がいないのかは知っておきたい。  尚、本家のゲームだと「白蝶の国」は必ず育成序盤で併合され滅亡する運命にある。  最後に三つ目が、先程見掛けた「ヒノミチ幻想戦記と別ジャンルの推し」こと礼彦(あやひこ)が登場するミュージックフィルムに近い類の動画作品『狂色に沈む街』(ファンの間での略称は『狂街』)の世界だ。  ミュージックフィルムとは、人気楽曲の世界観に対する製作者の独自解釈の元作られた物語を映像化したものである。  この作品と元になった楽曲は、明治から大正時代ぐらいの日本に近い世界が舞台。内容は、一つの街が人情の縺れとオカルトが原因の惨劇に巻き込まれて、やがて血の海に沈む(二重の意味で)過程を描いたサスペンスホラー要素が付いた悲劇。  礼彦はその中でヒロインのような立ち位置だった。名家の養子でありながら、裏で街を怪異から守る為に戦うヒーローのような存在の一人だったが、ヴィランに当たる怪異に魅入られ、最終的にはその怪異の正体を知り、板挟みの状況に絶望しながら取り込まれてしまうという報われない最期を迎える。公式で美形設定なことぐらいしか幸せ要素が殆どない高校生である。しかし、ミュージックフィルムの方は楽曲とは違い余り世間に知られておらず、転生者仲間の中でも、私しか知らなかった。礼彦の他にも、メインとなる登場人物は8名程いる。    此処までを踏まえた上での今後の動向だが、今のところ、少なくともこの3つの世界が今生の世界の一部になっていると仮定すると、先ず『狂色に沈む街』の登場人物と怪異、そして舞台となる街を特定し、対策を練らなければならない。もし仮に元ネタと同じ結末を辿ることになったとして、作品通りの街一つ分、もしかしたらそれ以上の広範囲に被害が及ぶ可能性が大いに考えられる。二次元の話だったらまだ悲しいねと思うぐらいで終わりだったが、現実で発生すると、たとえ関係なくとも寝覚めが悪くなる。  こう言うのは作品に失礼とは思うが、『狂街』がマイナーな作品なのは事実。しかしいざ惨劇が現実となったときに想定される被害の深刻さを鑑みて、これについて掲示板にて仲間に共有した。取り敢えずは仲間が皆話を聞いてくれたことについて感謝しかない。『狂街』の舞台となった地名も教えて、心当たりが無いかを尋ねたところ、なんと私の国と「蒼鳥の帝國」との国境近くだという。これは最悪の場合、私が事態収拾に向かわねばならなそうだ。しかし、現状はこの街に特に目立った動きは見られないし、少なくとも礼彦の身については雪代城にいるのでまだ安心できると気づいたので、今夜は掲示板を閉じた後、割と快眠できた。
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