特集・令和の住まいとマンションポエム

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「ハニカムはどうにも合わなくて、三年前から予約して入居しました。新築、というのも決め手ですね。前住人の思念が残っていない。もちろん窓なしの部屋を選びました。角部屋だというのもいいですね。静かだし、角部屋というとどこも窓がついてしまってね、陽光信仰、あれは依存と呼んで差し支えないのではないかというのが僕たちの考えです。窓ありの部屋よりもいくらか高かったですがね」  赤ん坊を抱いた男が鼻の穴を見せつけるようにしながらカメラに向かって語る。隣に立つつるりとした顔の女が微笑みながら赤ん坊の顔をのぞき込んでいる。  部屋は真四角で、壁と床は全面を白に塗られている。目に入る家具といえばテーブルに椅子くらいで、それも白で統一されているた空間にとけこんでいる。壁には一枚、銀の額縁がかけられ、そこにも白い絵が飾られていた。正確には、白に薄いグレーで細い線が直線と曲線を交えて三本引かれている抽象画だ。横顔のようにも見えるし、猫の背中のようにも見える。 「荷物というほどの荷物もありませんが、必要なものは壁の内側に収納できるようになっています。基本的に料理はしないのでキッチン設備は最低限で事足ります。そちらもこのように、」
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