特集・令和の住まいとマンションポエム

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 男が赤ん坊を女に預け、壁の一部を押して横に滑らせると棚が現れ、中はまた白い引き出しによって整理されている。もう一方の壁を開けば中には一口のIHコンロとシンク、壁面収納された冷蔵庫とオーブンレンジ、食洗機、ウォーターサーバー等の設備をそろえたキッチンスペースが現れる。トイレや浴室・洗面所も同様だ。 「居住部には本当に必要なものだけを置きます。当然、植物なんかをこれ見よがしに置くなんてことはしませんね。ハニカムに住んでいた頃はなにしろ窓が大きいものだし、皆さん外に向けて植物を置かれるでしょう。うちだけ葉が外に垂れていないというのもなかなか気まずいものでしたよ。全部カーテンで覆っている部屋がまず奇異ですから。部屋自体はミニマムで良いとは思ったのですが、リユースが前提でしょう。前の住民の窓は緑で美しかったとか、そういう視線もあるんですよ。どれだけ厚いカーテンを使っても日差しは防ぎ切れませんしね。そもそも部屋を増やせるとか減らせるっていうのはどうなんでしょうね。人間の側が自分で自分を変えていけばいい話で、AIを相談役に置けば最小限を見誤ることもありませんよ」  壁を閉めながら男は言った。
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