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EP2 運命の出会い
鉛色の空から風が吹き付け、それがまるで何人もの人の声の様な不気味な音を放っているのが聞こえて来る。
その音の正体は、周囲に立ち並ぶいくつもの廃墟ビルに風が反響して聞こえているものであった。
比較的大きな規模のその街は廃墟ビルばかりが立ち並び、ボロボロになって崩れ落ちた壁の残骸が無造作に路面に散らばっているような場所だった。
道を歩いている者も居なければ、自動車が走っている様子も見られない。
ここは人が居なくなって久しく、随分と昔に朽ち果てた街なのだろう。
街に響く不気味な風の音は、まるで人々から忘れ去られたその街が泣いているかのようであった。
そんな街「ザイオン」に潜入し、立ち並ぶ廃ビルの屋上に陣取り、腕に装着した携帯デバイスの拡大スコープを使って何かを監視する少年の姿が一つ。
(クライン。こちらコウタ。目標がそっちに移動した。確認を頼む)
(こちらクライン。了解。目視で確認する)
口を動かす事も言葉を発する事も無く、お互いに連絡を取り合う二人の少年クラインとコウタ。
屋上に居るコウタと地上に居るクラインが連絡を取り合う事が出来ているのは、無線や携帯電話の類を使用しているからではない。
彼等は念波を操り、離れた場所に居る人間と会話する事が出来る魔法を使う事で対象者の脳内に直接話し掛けているのだ。
対象者への言葉を頭に思い浮かべ、念じるだけで回線が繋がっている者同士で会話する事が出来る「念話」と呼ばれる魔法の効果である。
彼等がここのような人っ子一人存在しない廃墟都市へと足を運んだのは、この街に潜むあるターゲットを撃破する為である。
その後も二人は小まめに念話による連絡を取り合い、コウタからの指示を元にクラインが目標地点へと素早く移動していく。
そして移動先のポイントにおいて、クラインは今回撃破するべきターゲットの姿を視認する。
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