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そして約束の十二時。
中央エリアの転移門に集まった光の中からルナが現れる。
シャワーを浴び、しっかりと乾かした髪の端を軽く触りながらルナは周囲を見回し、早速カイトを探し始める。
あんな性格のカイトだが、ああ見えて時間にはしっかりしており、これまで集合時間に遅刻をした事は一度も無い。
むしろ十分前には必ず集合場所に着いているというタイプである為、今回もきっともう既に到着していて転移門から現れる自分の事をガン見して来るだろうと思っていたのだが、彼の姿が見当たらない。
あれ~、何処行ったんだろう?
ルナが周囲をキョロキョロと見渡していると、彼を見付けた。
カイトは転移門から少し離れた場所で数人の子供達、男の子達に囲まれており、笑顔で彼等と何かを話している。
「ねぇねぇ。お兄ちゃんってSSSランク?っていう凄い魔法使いなんでしょ?」
「色んな属性の魔法を使えるって本当?」
「おうよ。炎、水、風、地から雷まで何でも使えるぜ」
そう言ってカイトは子供達の目線に合わせるようにその場でしゃがみ込み、自分の手の中でそれぞれの属性の小さな変化を見せてやると、彼等は目を輝かせて喜んだ。
「うおぉ~!!すげぇ~!!」
「カッコ良い!!」
流石はSSSランクの魔法使いというべきか。
一般人であっても知っている者にはそこそこ顔が通っているようだ。
「ねぇねぇ、どうやったらお兄ちゃんみたいな凄い魔法使いになれるの?」
「ん~、そうだな。まずは魔法について正しく学ぶところからかな。それをしっかりと頭と体に覚えさせて、必要な時にそれを引き出せるように一杯練習をする。そんな感じかな」
「え~?何か普通だね」
「地道が一番の近道。そして普通の事を当たり前のようにずっとやり続けて行くのって意外と大変なんだぜ?」
「そうなんだ。でもあんまり良く分からないな~」
「最初はそれで良い。いきなり色々な事を理解しようとしても絶対覚えられないし、続かないからな。ちょっとずつで良いんだよ」
「ふ~ん・・・」
そんなカイトと子供達のやり取りを見て、ルナは自然と笑みをこぼしていた。
フフ、カイトって子供にも優しいんだな。
あたしに声を掛けてくれた時もそうだったけど、カイトのああいうところ素敵なんだよな~。
カイトと子供達の様子を見ながら一人笑顔を浮かべていたルナであったが、ハッと我に返り、無意識に彼の事を考えていた自分に少し顔が赤くなる。
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