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ミルフィとお出かけ
そういえば、時間を言い忘れていた。私は今、後悔している。このままじゃ、私、ベンチと同化しちゃうよ。
「紀沙さん?体調悪いですか?」
「ミルフィ!」
休日の午前の公園には人がまばらにいる。バレなかったんだろうか?
「ミルフィ、羽は?」
「ちょっと、隠してます」
「そう。じゃあ、行こう!」
私はミルフィの手を取った。
「おいしいです〜。紀沙さん。」
「よかった。ミルフィはアイスクリーム食べるの初めてなの?」
「はい!」
純真無垢のその笑顔が眩しい。アイスも溶けそう。
「次はチーズハットク、食べよう」
手を引いた瞬間、悪寒がした。
「よう、紀沙じゃんか」
「なに?ついに誘拐までしたカンジ〜?」
「…」
「無視すんなよ。友達だろ。」
「紀沙さん、友達って…」
「ミルフィ、ついてきて」
「でも…」
「ついてきて!」
「はい…」
「お前、弱っちいくせに何?」
「子ども従えて調子ノってんの〜ww」
「…」
「おい、答えろよ」
「親殺しの紀沙ちゃん♪」
「それは…」
「状況証拠じゃ、お前しかあり得ないんだろ」
「でも、物理的に無理だからって無罪はおかしくなーい?」
「一人で三人も殺したのにな」
「楽しかった?それとも、辛かった?ねぇ、人殺しなんでしょ?」
「私は…」
「いい子ちゃんぶって何様のつもりだ?」
「私は人殺しじゃアリマシェーン!なんてウソなんでしょ?」
「このウソツキがな!」
後ろに吹っ飛ばされる。コンクリートの地面に頭をぶつけて朦朧とした。
「私は…」
波にのまれていく。親ナシ、人殺し、いい子ちゃんにウソツキ。何度も言われて、何度も耐えて、何度も何度も何度も!
「おい、人殺しなんだから立てんだろ!おい!」
「そうそう。薄情者でサイコパスのアンタなんかこんなのへっちゃらじゃないww。ねぇ、家族殺しさん。」
襟首を掴まれた。されるがままに殴られる。もう一人はそれを撮影するだけ。笑いながら、軽蔑して、嘲笑って、罵って、楽しんでる。なんで、こんなことになっちゃうの?
「占い本、オープン!」
「なんだ?」
「坊ちゃん、早く逃げなよ。悪い人は私たちが倒しておくからね。」
ミルフィ、何してるの?
「書き換え。運命は変わる。その姿を顕現せよ!」
光に包まれるようで温かい。目を開けた時には二人組は消えていた。
「今の何?」
「紀沙さん!大丈夫ですか?」
「うん。あの二人はどこへ?」
「ちょっと遠いところに飛ばしておきました」
かわいい顔が悪大漢みたいな顔をしたので、ちょっと怯んだ。
「そうなんだ…。あれ?痛くない。」
「それはよかったです!チーズハットク食べにいきましょう!」
私達は手を繋ぎ直して再び歩き出した。その日は特別な一日になった。
「あっ、忘れてました!」
「何?」
「紀沙さん、お誕生日おめでとう!」
「ありがとう」
今日最高の笑顔を咲かせた。
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