大丈夫の裏側

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大丈夫の裏側

「私、なぜあなたのような方が天使に近づいているのかわからないですの。圧倒的に私の方が完璧で欠けたところもない。完全無欠とは私のこと。そうでございましょう?皆さま。」 取り巻きたちがうなずく。よくこんなヤツとつるめるよねー。 「私はミルフィの友達。幸せもらおうなんて一つも思ってないし、ミルフィの仕事の手伝いだってしてる。それに比べてアンタはどう?人から施しを受けようとするその姿勢が天使の目に映るとでも?」 あっ、ちょっと怒りが混ざってしまった。落ち着け私。冷静さは勝負の鍵。 「私のこのお顔。綺麗すぎて太陽より眩しいでしょう。私のこのご尊顔に拝むのは天使も同様。そうではなくて?」 自信ありあまりすぎピーポーじゃん。みんな引いてるよ。 「だから、ミルフィは顔だけで選ばないって言ったでしょ。何回言ったらわかんの?宇宙人。」 「宇宙人ですって⁉︎あなたこそ親ナシで人殺しのくせに何を言ってらっしゃるの⁉︎」 「事実ですが何か?」 私は距離をつめる。コイツがクラス委員長になった時も、三年生は参加できないはずなのに、生徒会に立候補して落選したことも、いつもなんかの実行委員をやっては教師にへこへこして媚び売ってんのも、全部事実だし、それ笑われてるんだよ。さらにお嬢様キャラときた。みんなの笑いの的にされた腹いせか私をクラスのシカト対象ってか。やっぱり一番かわいいのは自分なんですね。はい、そうなんですね。 「アンタは途中まではいいけど、最後がダメなんだよ。自分で満足してはい終わり。それで本当に終わりなの?周りを見てごらんよ。」 私もコイツのことを笑ったことはある。だってやることなすこと全部がキチガイの所業で笑うことしかできないから。だからって、こんなヤツの手を差し伸べて助けてあげるなんてただの聖母様だ。私はコイツのことは助けない。だけど、注意はしないといつか後悔するから。 「私はアンタの積極的な姿勢は好きだし、何よりも、誰よりも熱心でクラスや学校のためだと思ってやってくれてるのはすごいと思う。だけどさ、こんなところで落ちぶれんなよ。アンタはそういうヤツだったか?黒瀬(くろせ)。」 「あなたに私の名前を呼ぶ資格なんてありませんわ。今すぐそこから立ち去りなさい!」 「そう。黒瀬が変わることを願うよ。」 これで朝の騒動は終わった。この後、私は図書室に行った。 この学校の図書室はほとんど人がいない。いいところだと思う。静かだし、落ち着くし、綺麗に整備されてる。きっと、ここが好きな人がいるのだろう。 私はお目当ての本を取って読み始めた。 「がんばったね」なんて誰にも言ってもらえない。 私はずっと一人なのかな。このまま、誰にもウソの大丈夫で過ごしていくのかな。 「大丈夫なんてウソに決まってるじゃん…」 なんで見栄張ったんだろう。一人で大丈夫なんて私には無理だよ。気づいてよ。こんなに苦しくて辛くて生きづらい世界なんかいたくないよ。 嗚咽が漏れる。誰かに気づいて欲しくて、誰かから優しくされたくて、独りぼっちなんて私には無理だよ。いなくらならないでよ。消えないでよ。私だけ残して逝かないでよ…。 「紀沙!」 私は深く深く沈んでいった。
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