1人が本棚に入れています
本棚に追加
九、二〇一八年一月十四日
センター試験が終わり、少しほっとする。リスニングと国語が自信ないけど、まあみんなもそうだと信じることにした。あれ、僕文学部行きたいんだよな。
大事なのは二次試験。でもセンター試験の結果でも受ける大学は変わってくる。自分にプレッシャーをかけたい気持ちともう休みたい気持ちとが戦う。今日は休みたい気持ちが勝った。
同じ会場で受験している彼とは会場の出入口で合流して帰る。
二日間溜め込んでいた疲れが一気に現れて、文字通りぐだぐだになった。
「大智は、次、実技だっけ」
「うん、まあ学科も少しあるけど」
「そっか」
疲れているせいかいつものようにとんとんと会話が出来なかった。
多分疲れのせいだけでは無いけれど。
「なんかもう卒業感がすごい」
「ほんとそれなー」
「……大学行ったら、遠くなっちゃうね」
「何暗いこと言って。全然遠くなんて……」
「……遠いよ」
「……遠いな」
北海道と東京。八百キロは簡単に超える距離がある。
何で近くの大学を選ばなかったんだろうって今更後悔する。
「……でもさ!ゆうて飛行機で一時間半くらいだし」
「時々会いに行く」
「俺も」
二人の肩と肩の間に沈黙が通り過ぎる。白い雪で敷き詰められた歩道を、じゃりじゃりと音を立てながら歩く。冬の冷たくてさっぱりとした匂いがする。
「なんか暗い話しちゃったね、楽しい話しようよ」
「うん、そうしよ」
へへへなんて笑ってみる。寒さで少し赤くなった彼の耳と鼻の頭。はやりの髪型にするとか言って伸ばしている彼の前髪が濡れてきらきらと見える。街路樹の枝から、ぱらぱらと少量の雪が降ってきた。今日は、いつもより寒い感じがした。
彼と面白い思い出話やなんでもないことに笑いあって家まで帰った。
……それでも僕らの傷は癒えなかったけれど。
気がつくとあのいつもの小さな交差点に立っていた。
「じゃあ、また明日」
「おー」
二人でほぼ同時に背を向ける。
寒さで白くなった息が、僕を包む。道路沿いの雪の小さな山は、ところどころキラキラして見えて、綺麗だった。
ただ僕は家まで歩く。無心だった。
今日は、もう疲れた。
最初のコメントを投稿しよう!