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李凰国の少年 2
心拍数が上がっている。これから生活を共にすることになる少年達のもとにいた時より、ずっと。比べ物にならないほど。ここには夏朗と自分以外、誰もいないというのに。
お堂である。何百人もを収容できる広さである。李凰の神は人間の生身を借りて生きているから、正確には今ここにはいない。しかし李凰の神への忠誠を誓う場となる。
板の上に正座をする。板に両手をつき、李凰の神が腰を掛ける場に向かって、深く深く、頭を下げる。
李凰様。ついに伺いました。いずみも一緒です。
脳内に歌が流れている。李凰の神への忠誠を誓う歌。明日から自分もこの口で歌うことになる歌。あの娘が愛してやまなかった歌。美しい旋律だ、何百年も前から廃れることなく歌い継がれてきたのだ、いくつもの魂と共に。それは篤弘の血となり全身を駆け巡り、やがて涙となって眼球を押し上げる。
どのくらい時間がたったか分からない。気がついたら自分の両手の間にいくつもの水滴が落ちていた。
夏朗の視線を感じた。
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