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わたしは、救世主になりたかった。
伝承に描かれた救世の英雄に憧れ、いつか誰もを救うのだと、本気でそう思っていた。
自分にはそれができるのだと、そう確信してさえいた。だって、わたしは。わたしは特別、耳がよくて。よく願いが聞こえて。
──そして、神様に愛されていたから。
偶然じゃない。わたしが「理解した」瞬間、かれらの願いが叶ったのは。皆ことごとく、突然に、「事故」に巻き込まれて死人となったのは。すべて、すべて、わたしの力ではない。
わたしを愛する神様が、愛しい人の子の願いを聞き届けていただけだった。知りたくもなかったのに、わたしは唐突に気付いてしまった。
わたしは、特別でも何でもないと。
「救世主に、なりたい」
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