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わたしは、救世主になりたかった。
救世主になるには、何か特別なひとでなければならなかった。例えば、ノブレス・オブリージュの精神を持った気高い貴人だとか。例えば、持てる者は与えなければ、と、無償の救いを施す英雄だとか。
少なくとも、そうでなくてはならない、と。他ならぬわたしが、そう思っていた。
なのに。
それなのに。
わたしはひとつも「特別」を持っていなかった。
ただの平凡な。
私が見下し、救ってきたかれらと、何も変わらぬただの人間だった。
ああ、それならいっそ。
救いも力もないのなら。生きている価値がないのなら。
「……もういっそ、死人にでもなれたらな」
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