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家族は大切にしなさい。
お姉ちゃんの願いは叶えてあげなさい。
母に言い聞かされたその言葉たち。その通りに、わたしは姉の願いを叶えようとした。しかし「死人」とはなんだろう。それがわからなかった。
故に、わたしは学ぼうとした。本から、先生から、親から、姉から。尋ね、聞き、疑問を持ち、噛み砕き、理解する。
理解した、その瞬間だった。姉が目の前で車に跳ね飛ばされた。居眠り運転の車。減速などせず、姉を引きずりながらどこまでも走り去っていく。周りの喧騒が、時が止まったかのようにしんと静まり返る。
家族も、通行人も、近所のおばさんも、みんな絶句していた。それほどあまりにも唐突な「事故」で、「死」だった。
けれど、その中でわたしだけが、ひとり。
『よかった! お姉ちゃんの願いを、叶えてあげられた!』
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