I want to be a dead person!

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『死人にでもなれたらな』  姉の言葉が反芻する。これなら知っている。「死ぬ」というのはすなわち「死人」となることだ。尋ねるまでもなく、噛み砕き、理解する。そうすれば、ほら。あっという間にかれらの願った通り。  押さえた口元から血が溢れ出す。毒だ、と誰かが叫んだ。いいとこのおぼっちゃんなのだから、いつかこれは起きてしまう事故だったろう。まったく、可哀想なことだ。可哀想、それだけだ。  跡継ぎを失ったかれらがどうなるのか、そんなものわたしの知ったことではないし。  でも、これがきみの望んだことだろう?  どこかで願った、きみの終末だろう?  遠くの席から倒れ伏すかれを一瞥して、ひとり。 「よかったね、大人になれなくて」
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