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「オレ…つい最近、誕生日だったんです」
「っ」
そうだったのか、と、驚いた顔つきをしている隼人に向かってにっこりと笑むと、
「でもその前日に、同棲相手に全財産持ち逃げされて」
と続け、彼方の誕生日を知らなかったことを悔やみ出しそうな雰囲気を封じ込めた。
「とんでもない一年の始まりになったって、思ってたんですけど…そうじゃないって、確信しました」
「…彼方?」
「そんな一年の始まりにしてしまったのは、なにが恋なのかも分からなかったオレのせいで、誰も悪くなくて。 己れのしくじりと不始末を知るための、教訓を得るための出来事だった。…誰のせいでもなく、未熟な自分を自覚するべきだっていう、ただ、それだけのことだったんだって」
「――…」
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