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「そーいうところが鬱陶しいんだよ」
「う…」
(鬱陶しい、だと…っ?)
あまりの物言いに声を失くして呆気に取られている彼方の前で大仰なため息をついた男は腕組みを解くと、両手を軽く天井に向け、軽く首を左右に振りながら口を開いた。
「あ〜あ。 すぐにヤらせてくれるビッチだってウワサ真に受けて声かけだけなのに、一回ヤッた途端に彼氏ヅラしやがって。 めんどくせぇなぁ!」
「…ッ!」
カッと頭に血が昇った、と、感じた時には。
仕事帰りにコンビニで買ったスイーツの入ったビニール袋を、裸の胸元目がけて投げつけていた。
「ってぇ…なにす」
反撃の声も聞かず。
掴んだドアノブを室内にいる男にぶつける勢いで思い切り閉めると、今にも泣き出しそうな顔をしてアパートの階段を駆け下り、今来たばかりの道のりを戻るように走り出したのだった。
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