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「おれは何度だって言うよ。 それに、誰が傍にいたって言えるよ、彼方が好きだって」
(っ、ひッ)
ビクッと肩を震わせ、
『隼人さんなら、本当に人前だって気にせず言い出しそう』
と思いながら内心で動揺していると、
「好きだよ」
すったもんだと考え続けるだけで口にできなかった言葉をいとも容易く口にした隼人の、想いのこもったフレーズを耳朶に吹き込まれた彼方は、身じろぎすらできなくなってしまう。
「こうして身一つになっても、その気持ちは途切れないし、どっちかっていうと、もっと彼方が欲しいっていう我が儘な気持ちがあとからあとからどんどん湧いてきてて…好きって言葉だけじゃ、足りなくなってる」
「…っ」
「もっと彼方が欲しくて――余裕がなくなりそう」
おれの方がずっと大人でいなくちゃならないのに、と呟くと、首まで真っ赤に染まっている彼方の顎先を捉え、上向かせた隼人は、
「彼方と、愛し合いたい。 彼方の全部が…欲しい」
と言って、戸惑い揺れる彼方の瞳を、熱い眼差しで覗き込んだ……
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