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「…どうぞ」
今にも立ち上がりそうな体勢になっていた女子社員が彼方へ目配せをして席にかけ直すと、彼方はやや緊張した面持ちで口火を切った。
「このプロジェクトに途中から参加させていただいたオレ…ボクでも、データの再集積の大変さは分かっているつもりです。 集めるデータは全国の店舗からだと考えれば、その膨大さも、蓋を開けて見なくても明らかです」
声の大きさは低めながらも、
『気持ちを伝えたい』
という思いのこもった彼方の声は、聞く人の耳朶に優しく響き渡った。
「ですので。 1つの提案として、聞いていただきたいのですが」
「…」
議長をしていた男が彼方を見て目で促すと、彼方は僅かに顔を動かして目礼し、話し続けた。
「ボク、今大学が春休み中で、割と時間に余裕があります。 データの解析とかはまだできなくても、集められたデータを分類して記録するくらいなら、任せていただいても大丈夫だと思うんです」
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