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私は三日三晩、飲まず食わずで歩いてやっと街にたどり着いた。
ロシアは一つ一つの都市があまりにも離れすぎているのでここに来るまでに想像よりもかかってしまった。
雪世界の旅途中に、『辛い』という感情をなくしていた。
街に入ると、私は二人の男に取り押さえられた。
運良く熊から逃げ延びた村の誰かが通報したのだろう。
一度の涙で千切れてしまうほど家族同然の絆は脆かったのか、、、
私が宝石を流したことが噂になってこの国では、『禁忌』などと呼ばれ、指名手配されていたらしい。
警察は私を、家畜運搬車に投げ入れられた。
家畜運搬車の檻はすべてが錆びついており、
床に乱雑に敷かれた木の板は、ネズミに齧られ、ボロボロになっていた。
護送車は檻でできており、外から見えるようになっていた。
外を見ると、この車を見た人たちは、嘘が見え見えな咳などをしていた。
少しして、車が大通りを逸れた。
外を覗くと、裁判所でも懲罰房でもない、、、病院のような場所に来た。
すべてが白色の建物の中から男がこちらにゆっくりと歩く。
男は医師のような白い大きな服を羽織り、顔には深いシワがあり、怖い印象を受けた。
でも、私を捉えられた喜びが溢れている笑顔のほうが、私には100万倍怖かった。
私は、檻の扉が開けられた瞬間、外へ逃げ出そうと決心した。
私を此処まで送り届けた軍服を着た図体のいい男は、ポッケから鍵を取り出し、扉を開ける。
私は男の股の下をするりと通り抜け、一目散に走り出した。
銃を持った護送を担当していた図体のいい男は私に銃口を向ける。
私の頭に照準を合わせると、引き金を引こうとする。
しかし、そこへ白い服を着た男が間に入ってくる。
「私の研究材料に必要以上の傷は与えるな、使い物になくなるだろうが」
そう言って、銃口を降ろさせる。
そして、白い服の男は胸から、一丁のハンドガンを取り出した。
私は打たれることを恐れ、全力で走る。
白服の男は、私の足へ標準を向けた。
ドンッ
私はその音に反応する前に地面に倒れていた。
私は堪らず、涙をこぼした。
それを見た男は、「ホープダイアモンドか!」と叫ぶ。
そして、這いずってでも逃げようとする私の上に乗り、首に注射を刺した。
「呪いの宝石とは、いい材料になりそうだ」
意識が朦朧とする仲、この声は聞き取れた。
「今日からお前は俺のペットだ。存分に宝石を吐き出せよ。」
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