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幼なじみの進とは、時々酒を飲みに行く。
今夜も、いつものように突然メールで誘ってきた。
成人式の日に同級生たちと飲んだ、「いよかん」という名の居酒屋で待ち合わせようとの、短いメールだった。
俺は仕事のスケジュールを確かめてから、8時なら大丈夫と返信した。
進も俺もメーカー勤務5年目の27歳。
こっちは車。向こうは服飾。仕事は二人とも経理事務。
似たようなトラブルがあると解決法を持ち寄り、それを肴に飲む事もある。
他にも趣味から家庭環境まで、共通点は多々ある。とにかく、根っこの所で波長が合う男なのだ。
その波長のためかどうか、俺に何かあった時には(例えば女が出来たとか別れたとか)何故か連絡が来たりする。
どうしてわかるのか不思議に思って聞くと、
「そろそろ何かあるんじゃないかってわかるんだ。長年の付き合いから来る勘だよ」
などと答える。俺は半信半疑で笑っているが。
午後7時40分。
会社を出ると目の前に停留所がある市バスに乗り「いよかん」へ向かった。
バスの中はクーラーが効いており涼しかった。
夜になっても去らない街中の熱気と湿気から逃れて俺はほっとし、空いている席に腰掛けた。
車窓に映る街の灯りを眺めながら、俺はふと7年前の、あの成人式の夜を思い出してみた。
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