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◇◇◇◇ 「貸し借りとかは嫌いなんでね」 柿崎はそう言いながら倉科にコロッケパンを渡すと、自分用に買ったらしいツナマヨパンにかじりついた。 泉が先ほど座り込んでいた近くのベンチでさほど腹も減っていないのにパンをかじっている二人は、教室棟から見たら妙に映るだろう。 「とにかく、これでチャラね」 貸し借り?チャラ? おかしな男だ。 自分から頂戴と言っておきながら。 「―――やっぱり演技か」 倉科が呟くと、柿崎は「ああん?」と言いながら振り返った。 「あのとき、沢渡が泉を虐めていたことを俺に隠そうとしただろう」 「いやいやいやいや」 柿崎は呆れたように首を横に振った。 「ないよ。そんなんしたら、あいつ泥船じゃん」 柿崎はそう言いながら足を組んだ。 「俺は自分が乗ってる船をみすみす沈めたりしませんので。そこは安心していーよ。何かあったら俺が止める」 「…………」 倉科は柿崎の顔を見つめた。 きっとこれは本心なのだろう。 先ほどまでのどこか引きつったような表情はしていない。 「なぜ―――」 思わず言葉がこぼれた。 「は?」 「なぜ、君が上に立たない?」
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