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◇◇◇◇
昼休み。
沢渡と中林と共に食堂から戻ると、いつもは適度にばらけているクラスメイト達が固まっていた。
「何それ、やべーじゃん」
「マジだって!」
話の中心にいるのは、いつもサッカー部や野球部にくっついている帰宅部の山田だ。
「なになにー?俺を差し置いて何の話―?」
沢渡が輪の中心にぐいぐい入っていくと、山田が興奮したような顔で寄ってきた。
「あの転校生の話!あいつさ、前の高校で事件起こしてんだよ!」
ーー事件?
柿崎は眉間に皺を寄せながら倉科の席を振り返った。
いつもそこで静かに教科書や参考書を開いている彼の姿はない。
「今、生徒指導室で教師と話してんの聞いちゃったんだけどさ。城西裁判所がどうとか、示談が成立したとかさ。俺、気になって調べてみたんだよ。城西、高校、事件、裁判って」
山田が鼻息を荒くしながらスマホを指さす。
「そうしたらさ、名前は出てないけど、1年の男子生徒が女子生徒を性的暴行して、その女子生徒、屋上から飛び降りる自殺未遂してんだってよ!」
「やだぁ……!」
「怖い!!」
女子たちが身震いをする。
ーー倉科が女子をレイプ……?んなわけないだろ。
柿崎は眉間に皺を寄せた。
「それ、本当に倉科のいた高校なのかよ」
つい口を出た疑問に、
「名前は出てないけど、間違いないだろ!だから裁判とか示談とかの話が出るんだろ!」
山田がむきになって言い返す。
マズい。
この展開は―――
「はは。ヤベえな」
隣で沢渡が笑う。
――ん?何がマズいんだ?
柿崎は自分に驚いた。
何もまずくない。
自分が沢渡王国を築く上で、倉科が犯罪者だろうが嫌われようが、何一つまずくない。
むしろ目立つ転校生が嫌われる方が、皆の意識が団結し、沢渡の方へ向くというものだ。
それに彼がいるのもあと1ヶ月ちょっと。
別にどんな噂が流れたって、彼自身大したことじゃないはず―――。
「あ、倉科君……」
ゆかりが言い、皆が振り返った。
そこには扉を開けた倉科が立っていた。
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