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◇◇◇◇
「転校生の倉科暁斗くんです。慣れるまではいろいろ教えてあげてください」
担任の言葉を受けて軽く一礼した生徒を見て、柿崎は机に頬杖をついた。
――転校生、ね。
倉科は顔を上げると、拍手を送るクラスメイト達をざっと見回した。
――こういうタイプってモテるんだよな。
顔は整っているのに、愛想がない。
それが無駄にクールだの媚びてないだの噂が噂を呼び、転校生というエフェクトも相まって、よりかっこよく見えるのだ。
横目で沢渡を見る。
――あ、やっぱり。ご機嫌斜めだ。
沢渡は背もたれに両腕をひっかけ、足を組み、顎を突き上げながら転校生を睨んでいる。
――これは、要観察だな。
倉科という男の頭脳と人気によっては、沢渡から彼に乗り換えてもいい。
沢渡は使いやすいが、少々感情の起伏が激しいのと、脳の回転数が乏しいのと、女子からあまり人気がないのが玉に瑕だ。
「倉科です。母の仕事の都合で夏までの編入となります」
倉科は綺麗な顔にしては低い声でそう言った。
――は?夏まで?
柿崎はぽかんと口を開けた。なら4ヶ月しかない。
――前言撤回。やはりピエロは今年度も沢渡に決定。
再度横目で沢渡を見ると、やっと足を下ろした沢渡は、「なら関係ない」と言わんばかりにニヤニヤ笑いだした。
それにしても―――。
1学期のうちしかいないなんて、まるで彼女みたいだ。
去年、2学期になると同時に転校していった美少女の顔が、顔を上げた倉科と重なった。
「短い期間ではありますが、よろしくお願いします」
倉科が再度頭を下げると、今度は沢渡や柿崎を入れたクラスの大半が拍手をした。
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