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◆◆◆◆
「お前さあ、転校生に話しかけられたくらいでなに調子に乗ってんだよ!」
沢渡は空き教室に泉を連れていくなり、彼の華奢な肩をとんと押した。
「……別に、俺は……!」
積み重なった机に背中をぶつけた泉が、恨めしそうな目で沢渡を見る。
2人の慣れたやり取り。
どうやら中学校の時からこういう仕打ちを受けて来たらしい。
「お前が一番気弱そうだったから話しかけられただけで、クラスに溶け込んだらおまえなんかまたボッチに戻るんだからな!」
「あはは!そーだそーだぁ!」
沢渡の隣で、泉とは今日が初対面であるはずの中林も下卑た笑い声を漏らす。
「なあ、中学校の時みたいにずっとぼっちだったら寂しいだろ。お前さえよければ俺らのグループに入れてやってもいいんだぜ?」
沢渡はそんなことを言いながら、泉の肩に腕を回した。
「まあそこはお前の誠意次第ってとこだろうなー。例えば一緒にいてやるお礼に、毎朝俺たちにアイコ奢るとか?」
「いいねえ、俺はコーラがいいな」
中林が便乗し、
「バーカ、お前デブなんだから気を付けろって!」
沢渡が笑ったところで、
「――それって、立派な恐喝だよね」
空き教室に凛とした声が響き渡った。
4人で振り返ると、そこには購買のパンを抱えた転校生の倉科が立っていた。
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